蒜山の自然と人に惚れて移り住んだ、人と植物の繋がりを大事にする草木染作家
中和(ちゅうか)で染物と言えば、奥野和義(おくの かずよし)先生。中和では自然と生活の中に草木染のモノを取り入れている方が多いように思います。
奥野先生のお家は暖簾や座布団カバー、身に着けるストールや手ぬぐい、コースターだけでなくブックカバーまで草木染で染め直したりと、暮らしに優しい色が溢れていて癒されます。
- 1.草木染との出会い
- 2.地域の方へ草木染を身近に感じる仕掛けづくり。草木染師としての個性。
- 3.”ゆい”という言葉に込められた想い
- 4.植物の個性を引き出す草木染から学んだ人間関係
- 5.イベント詳細
草木染との出会い
奥野先生へ草木染をするきっかけも含めて取材に行きました。
奥野先生が中和で草木染をするようになったのも偶然が重なったことがはじまりなんだそう。
京都府出身の奥野先生が草木染に出会ったのは約21年前。
京都では建築の設計士の仕事をされていました。体を壊して仕事を休んでいるときに友人の福祉施設の立ち上げを手伝い、人手不足であったことから、そのまま立ち上げた福祉施設で働かれるようになりました。
染色家の方が草木染と藍染の特別授業をしてくださったことがきっかけで、利用者の方の作業の一環で染物をすることが決まり、奥野先生は染物の作業担当者を任されました。
伝統工芸師の先生から染物の工程を教わった後、実際に指導をしていく中で、だんだん「もっと本格的にやってみたい。」と思うようになったそうです。
旅行でたまたま真庭市蒜山に遊びに来られていた際、宿泊先のペンションのオーナーの一言が奥野先生の心を動かしました。
「蒜山で草木染やってみたらいいんじゃない。四季がはっきりしているし植物も豊かだよ。」という言葉。
「とりあえずやってみて、ダメだったら京都に帰ろう。’’やっとけばよかった’’と後悔するのだけは嫌だ。」と思い、そこから蒜山で草木染をするために家を探し、蒜山中和(ちゅうか)地区に住むことになりました。
地域の方へ草木染を身近に感じる仕掛けづくり。草木染師としての個性。
何か工夫をしながら自分の染色家としての特徴を持たせていくために、簡単な絞りを使った技法を組み合わせ工夫して模様を作ることと、中和にある染める材料の豊かさを作品に出すことにこだわっていきました。
染めるうちに、草・木・花・実からただ色を出すのではなく、つかった葉っぱの形を残したいと思われるように。
レンコンやオクラの模様が染物で使われているのをヒントに、作品の中に葉っぱの模様をつけててみたことで草木染のバリエーションが増えていきました。
そして、移住してきたときからお世話になっている方から話をいただいたことがきっかけで、中和にある大きな宿泊施設である「津黒高原荘」が館内リニューアルオープンをする際に、館内の雰囲気を中和の植物で染めた草木染の品々で統一したいという声を頂いたそうです。そこで、奥野先生のみで染めるよりは地域の方たちと一緒に染める方が広がりがあると感じ、「ゆるるか草木染クラブ」を立ち上げ、作品をつくる活動を始めていきました。
クラブで染めたものを「津黒高原荘」に飾ったり、中和でのお祭りなどでも展示をしています。
”ゆい”という言葉に込められた想い
日本の里山が残る中和には、津黒いきものふれあいの里という施設があり、里山の環境保全に詳しい自然観察員が在中していることや、植物に詳しい村人もいたことからどうしても分からないことがある時には頼って聞きに行ける環境があることも奥野先生の草木染ライフを充実させていきました。
実際に中和に来て草木染を始めるよりも先に屋号は決めていたそうです。奥野先生の屋号は「手染屋ゆい」。
この言葉を付けたのも人の縁から来ています。福祉施設の施設長が沖縄がとっても好きな方だったらしく、「沖縄には’’ゆいまーる’’という言葉があってね……」と教えてくださったそうです。
相互扶助の意味がある「ゆいまーる」。
奥野先生もその言葉がストンと入ってきて、この言葉の様に助け合いをモットーに暮らしを大事にされています。
奥野先生が中和に移住して来られて18年が経ちます。
最近では真庭なりわい塾を機に中和に来るようになった卒業生たちの協力を得て、草木染の活動をすることもあるそうです。
茜色が出る日本茜の栽培を見学しに京都の美山まで行かれたりと、積極的に活動されています。
奥野先生の想いが伝わり、若い人たちも助け合い支え合うようになったのでしょう。
植物の個性を引き出す草木染から学んだ人間関係
奥野先生に染めるときどんなことを大事にしているんですか?と尋ねました。
「植物にも目につく植物と、ひっそり隠れている植物があって、出来るだけその植物の良さを引き出して、いろんな色を伝えていきたいと思っています。」と答えてくださいました。
どうすれば綺麗な色が出るのか、どの条件・どの方法だとその植物が持つ本来の個性を伸ばすことができるのかということを考えて教えてくださる奥野先生はまるで親の優しい目をしていました。奥野先生が植物のことを教えてくださるときはまるで植物ひとつひとつに性格があるかのようです。
「草木染で大事にしていることって人間関係でも言えることがだんだんわかってきたんだ。」と深い言葉をおっしゃったので、すかさず「どういうことですか?」と聞きました。
先生曰く、人間関係も草木染も最初にイメージを持つんじゃなくてその人をどう見るか、まずその人を受け入れて、そこから、どうすればその人しか持っていない良さを引き出すことができるのかを考えると上手くいくのです。価値観が合わないとかでストレスを起こすんじゃなくて、その人を受け入れて、自分の価値観を崩していけばストレスが減って人間関係もうまくやっていけるし、その人の好さが分かってくる。
奥野先生の草木染の魅力から、人間関係に通ずる深いお話を聞かせていていただきました。
時期に適した植物でも、採取してからの日数で色の違いが出るところがまた草木染のおもしろさ。人とくらしの博覧会中(7~9月)に使える主な植物で草木染体験をしてみませんか?
イベント詳細
中和の植物で染める草木染体験
◆開催日 随時受付(3日前までに予約・日程要相談)
◆場所 手染屋ゆい もしくは 津黒いきものふれあいの里「ささゆり館」 ※要相談
◆定員 1~5人まで
◆料金
①半日コース(媒染液から作り、染めていくコース) ※2時間程
講師料3,000円+染める材料費※
②一日コース(植物の採取から取り組むコース) ※4~5時間程
講師料4,000円+染める材料費※
◆申込 TEL:090-4497-5319(奥野和義先生)またはfacebookメッセンジャーから
奥野先生とゆるるか草木染クラブと染める草木染教室
◆開催日 8月1日(木)~8月5日(月)9:00~15:00
◆定員 10人
◆料金 講師料2,000円+材料費※
◆場所 津黒いきものふれあいの里「ささゆり館」(岡山県真庭市蒜山下和1077)
◆申込 TEL:090-4497-5319(奥野和義先生) またはfacebookメッセンジャーから
※材料費※
・手ぬぐい・ハンカチ 500円~
・ストール・シルクストール 500~2500円
・エコバック 500~2500円
・ランチョンマット 800円
・コースター 400円
人とくらしの博覧会中(7~9月)に使える主な植物たち
・葛の葉(7月) ・赤(あか)麻(そ)(7~9月) ・令法(りょうぶ)(7~9月)
・桐の葉(7~9月) ・キブシ(7~9月) ・彼岸花(9月中旬) and more…
ゆるるか草木染クラブ作品展示
◆開催日 8月17日(土)~ 8月30日(金)
◆場所 エキチカARTBOX(JR岡山駅地下通路広場ショーケース内)