ボクらが見た景色 – JR姫新線 × 旭川りんくるライン de エコマルシェ – イベントレポート
2022年11月20日の日曜日。
これから始まるイベントを前に、ボクは美作落合駅に到着した。
朝10時スタートの直前まで、慌ただしく準備をするスタッフや出店者の方々。
イベントの数日前まで、この日の天候は雨が予想されていた。
けれども、真庭には晴れ男と晴れ女が多いのか、そんな心配が吹き飛ぶ良い天気に恵まれた。
気温もさほど低くはない。
真庭市内を走るJR姫新線(きしんせん) – 非電化の為、電車ではなく、「汽車」と呼ばれている – の美作落合、久世、中国勝山の3駅を舞台に行われるマルシェは「JR姫新線×旭川りんくるライン de エコマルシェ」と銘打たれていた。
ちょっと欲張りな名前だなとは思いつつ、心待ちにしていたイベントが各駅でスタートした。
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そもそも「姫新線」とは?
姫新線は、兵庫県姫路市の姫路駅から岡山県新見市の新見駅までの約158kmを結ぶJR西日本の路線だ。
古くから真庭の地域住民の「足」を担っており、市内における停車駅は7つある。
旧勝山町内の富原、月田、中国勝山。
旧久世町内の久世。
そして旧落合町内の古見、美作落合、美作追分である。
鉄道は、通学する高校生や通院する高齢者など、多くの市民に必要不可欠なもの。
真庭市も「日常の移動手段として欠かせない公共交通」「重要な社会基盤」と位置付けており、大切な鉄道を「乗って守る」ことをスローガンに掲げている。
しかし、姫新線をはじめとする公共交通機関の利用者は減少傾向。
今回のマルシェイベントの発端とも言うべき衝撃のニュースが、JR西日本が2022年4月に公表した「路線別収支の状況」だった。
関連リンク:JR西日本の路線別収支 中国地方の苦境が鮮明に
別の報道でも、姫新線は「1日の利用客数が1キロあたり2,000人未満の赤字路線であり、存廃問題が浮上している」と言われている。
2022年は日本の鉄道が開業して150 年となる節目の年であり、旧国鉄の分割民営化でJRが発足して35年目にもあたり、まさに鉄道網がどうあるべきかを問い直す時期とも言える。
話を真庭市に戻すと「姫新線がいつか無くなるかもしれない」という話は、地元の高校生をも動かした。
勝山高校と真庭高校の生徒代表が、姫新線存続を求める約1,200人分の署名を真庭市長と市議会議長に提出したのが2022年10月。
高校生たちにとっては死活問題で、それは同時のその保護者の送迎の問題にもつながってくる話。
子育て世代の知り合いが多い自分としても他人事ではない。
そんな問題が横たわる中、今回のイベントは行われた。
地域のプレイヤーが集まったマルシェイベントを写真とともに振り返る
主催したのは真庭市(市役所)であるが、携わった様々な人が真庭に想いを持って作り上げたイベント。
姫新線沿線の街が一体となって開催された様子を、写真とともに振り返る。
会場①美作落合駅
▲美作落合駅の様子を真庭市のYouTuber「ウエストノーズ」さんが動画にしてくれました。
会場②久世駅
▲久世駅での動画。WHILLの試乗体験やクセの強い農家との絡みなど、見どころ満載です。
会場③中国勝山駅
▲中国勝山駅での様子はこちら!
姫新線の未来について考えた1日
自分たちが住んでいる地域の「足」が無くなってしまったら…
移住前、都内に住んでいたボクからしたら、通学で使う電車が無くなるということなど考えもしなかったし、仮にそのような話がニュースに取り上げられたとしても、それは画面の奥で話題になっている他人事でしかなかった。
例えば、自分の住まいを説明するにも、「最寄駅は●●駅で、歩いて何分」という感覚が日常だった。
残念ながら「駅チカ」という概念は都市のものなのだ。
車で動くことが当たり前の真庭では、それは存在しないに等しい。
大多数の人たちが車社会の恩恵を受けており、通学で利用する学生やその家族以外にとって、この地域課題は正しく伝わっているのか、という想いもある。
正直、まだまだ課題は山積みであると思う。
姫新線を利用することが全てではあるが、地域の現状を踏まえて考えると「自分たちの生活との折り合いをどのようにつけていくのか」という点も大事なことだと思う。
あくまでこれは私見だが、地域内の利用促進を進めるよりも、観光資源としてテコ入れすることで、魅力を再発見する方が近道なような気がしている。
その際の観光客の受け入れ態勢として、地域が活気にあふれていることが次のステップにもなる気がしている。
それ故、今回のイベントはまだ序章に過ぎない。
定期的に姫新線の利用を促すイベントを行なって、地域内外の人に関心を持ってもらう。
真庭を訪れる一人でも多くの人に、ここが魅力的であることを知ってもらう。
都合の良い部分も多いかもしれないが、自分たちが出来ることを健気に続けていく。
今回のイベントにも、多くの人が携わった。
この日のマルシェイベントの参加者は約1,500人、スタンプラリーに参加したのは240人だったそうだ。
イベント企画に奔走した人たち、地元の出店者のみなさん、音楽隊、YouTuber、カメラマン、ライターと、それぞれ個性を持ったメンバーが自身の得意な領域で、この日の記憶を残そうとして動いた事実がある。
コミックスはほとんど読まない自分だが、いくつかお気に入りの作品がある。
主人公はピンチに何回も直面するが、その度に立ち向かいパワーアップして、強大な敵を倒していく。
時には自分一人の力ではなく、仲間や地球のみんなからパワーをもらって。
かの主人公のように、姫新線の問題も真庭のみんなで集めた「元気玉」を使い乗り越えていければと密かに願っている。
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◆写真提供:大山貴志
◆この記事を書いた人:酒井悠(真庭市地域おこし協力隊/ライター )
2022年5月に東京から真庭市に移住。小学生時代から野球に熱中し、移住前も草野球で汗を流す生活。真庭市内で草野球が出来る環境を模索中。好きな球団は横浜DeNAベイスターズ。NEW ERA(ニューエラ)のキャップを被ると落ち着くことから、週の半分以上はキャップを愛用。